1.多摩川格差が話題に
最近ニュースでも耳にする「多摩川格差」。これは、東京都と神奈川県の間を流れる多摩川を境に、それぞれの自治体間で生じている行政サービスや経済的支援の大きな開きのことです。これが、子育て世代の間で囁かれる「多摩川格差」です。
かつては「東京は家賃が高いから、川を渡って神奈川で固定費を抑える」といった人も多くみられたようですが、2026年現在、東京都が次々と打ち出している圧倒的な子育て支援策により、その損得勘定が逆転し始めています。高い家賃を払ってでも東京で暮らした方が得だと思う人が増えてきているのです。
こうした多摩川格差について、本当に大きな差が生じるのか?シミュレーションをしてみたいなと思いますので、ぜひ参考にしてもらえたら嬉しいです。
2.東京都独自の子育て政策
2-1. 018サポート:所得制限なしで月5,000円支給
子どもがいる家庭には国から月10,000円から30,000万円の児童手当が所得制限なしで配られます。
東京都では、これに加えて月5,000円の支援を行っています。国が行っているものと比較するとちっぽけに見えるかもしれませんが、年間に?すると6万円、18歳まで受給したとすると、108万円にものぼります。また、これを運用(投資が怖い方は定期預金とかでも良いと思います)すれば、さらに多くの現金を受け取れていることになります。
2-2. 第1子から0〜2歳保育料無償化
幼稚園や保育園の「3歳児クラス」からは、国の制度により全国どこに住んでいても保育料は原則無料となりますが、保育園の0〜2歳クラスは基本的には有料となっている自治体が大多数です。
そんな中、東京都は2025年9月から「第1子からの0〜2歳児保育料無償化」を所得制限なしで実施しています。これにより、共働きで世帯年収が1,000万円を超えている方々も安心して保育園を利用できるようになりました。東京23区で世帯年収1,000万円だと決して余裕がある水準というわけではないため、すごくありがたいことだと思います。
2-3. 私立高校授業料の実質無償化
東京都では2025年度から、公立高校だけでなく、私立高校授業料の実質無償化についても所得制限なしで実施しています。
ただ、2026年度以降は、国の制度により全国一律で無償化が行われるため、今後は東京に住むメリットとはならなさそうです。とは言っても、財源が浮くわけですから、別の政策を打ち出してくる可能性は大いにあり得ると思います。実際、東京都のホームページにも、「令和8年度における制度内容については現在検討中です。制度内容が確定次第、以下の内容を更新します。」と記載されているため、今後に注目です。
3.神奈川県独自の子育て政策
正直なところ、金銭面では東京に一切敵いません。だからこそ「多摩川格差」なんて言葉が生まれてしまうわけです。ただ、だからと言って何も良いところがないわけではありません。
神奈川県独自で東京都に対抗できる政策ではありませんが、それぞれの市独自で良い事業が打ち出されていますので、いくつか紹介していきます。
3-1. 【厚木市】おむつ定期便
厚木市では、2歳の誕生月前月までのお子さんを養育している親に対して、紙おむつやおしりふき等を負担する事業を実施しています。
具体的には、紙おむつやおしりふき等の中から住民が自由に選び、子育て給付課へ申請後、厚木市が委託している事業者に自分で注文します。1か月当たり450点までは厚木市が負担し、それを超えた分は1点につき10円の自己負担となるようです。
3-2. 【横浜市】日本最大級の放課後キッズクラブと待機児童対策
放課後キッズクラブは、小学校施設を活用して実施する事業で、①全ての子どもたちを対象に無償で「遊びの場」を提供すること、②留守家庭児童を対象に「生活の場」を提供することを目的に実施している事業です。平成16年度に開始され、令和2年度には横浜市の全ての小学校に設置されています。
原則として、当該実施校に通学する1~6年生で、利用を希望する児童が利用でき、何時まで利用するか等で3つのコースが用意されています。
- ①わくわく【区分1】
平日:放課後から午後4時まで
土曜日:なし
学校休業日:放課後キッズクラブが指定する利用時間のうち2時間程度(午前・午後の2回のうちいずれか(夏季休業日のみ午前の1回)
※わくわく【区分1】は「遊びの場」として実施しているため、災害時・熱中症警戒アラート発令時・感染症対策等により実施しないことがあり。
●利用料 無料 - ②すくすく(ゆうやけ)【区分2A】
平日:放課後から午後5時まで
土曜日:午前8時30分から午後5時まで
土曜日を除く学校休業日:午前8時から午後5時まで
●利用料
4~6月及び9~3月:⽉額2,000円+おやつ代
7・8月:月額2,500円+おやつ代(実費程度)
(横浜市就学援助を受けている世帯、市⺠税所得割非課税世帯、⽣活保護受給世帯は無料) - ③すくすく(ほしぞら)【区分2B】
平日:放課後から午後7時まで
土曜日:午前8時30分から午後7時まで
土曜日を除く学校休業日:午前8時から午後7時まで
●利用料
4~6月及び9~3月:⽉額5,000円+おやつ代(実費程度)
(横浜市就学援助を受けている世帯、市⺠税所得割非課税世帯、⽣活保護受給世帯は⽉額2,500円)
7・8月:月額5,500円+おやつ代(実費程度)
(横浜市就学援助を受けている世帯、市⺠税所得割非課税世帯、⽣活保護受給世帯は⽉額3,000円)
4.家賃相場はどれくらい?物価は?
ここまでは、東京都がすぐれた政策を実施している内容を主に説明してきましたが、生活にかかる費用は東京の方が圧倒的に高くなります(主に住居費用)。いくら東京都の支援が素晴らしくても、生活費などを加味した結果、神奈川県と比べて不利であれば意味がありません。なので、ここからは生活費を見ていきます。
4-1. 住居費用
東京都の物価は高いとよく言われますが、その最たる例が住居にかかる費用だと思います。家賃は年々上昇し、私が2年ほど前に住んでいた住宅は10%ほど価格が上がっていました。また、家賃だけでなく、住宅価格も右肩上がりです。
賃貸
東京都
| ワンルーム | 1K/1DK | 1LDK/2K/2DK | 2LDK/3K/3DK | 3LDK/4K~ | |
|---|---|---|---|---|---|
| 千代田区 | 11.0万円 | 11.4万円 | 19.0万円 | 30.0万円 | 55.3万円 |
| 中央区 | 10.5万円 | 10.8万円 | 18.6万円 | 26.7万円 | 35.0万円 |
| 港区 | 11.5万円 | 11.6万円 | 22.7万円 | 35.8万円 | 54.8万円 |
| 新宿区 | 8.4万円 | 10.3万円 | 16.7万円 | 25.9万円 | 34.8万円 |
| 文京区 | 8.0万円 | 9.0万円 | 16.0万円 | 23.0万円 | 29.8万円 |
| 台東区 | 8.5万円 | 10.1万円 | 15.2万円 | 20.9万円 | 26.3万円 |
| 墨田区 | 8.3万円 | 9.1万円 | 14.4万円 | 19.3万円 | 21.8万円 |
| 江東区 | 8.5万円 | 9.6万円 | 13.5万円 | 20.9万円 | 23.4万円 |
| 品川区 | 8.3万円 | 9.4万円 | 15.9万円 | 22.7万円 | 29.3万円 |
| 目黒区 | 8.8万円 | 10.0万円 | 16.6万円 | 25.8万円 | 32.4万円 |
| 大田区 | 7.1万円 | 8.3万円 | 12.3万円 | 16.4万円 | 19.9万円 |
| 世田谷区 | 7.3万円 | 8.8万円 | 14.2万円 | 19.0万円 | 24.7万円 |
| 渋谷区 | 10.0万円 | 10.8万円 | 19.5万円 | 31.0万円 | 50.9万円 |
| 中野区 | 7.1万円 | 8.8万円 | 13.5万円 | 18.5万円 | 21.4万円 |
| 杉並区 | 6.8万円 | 8.2万円 | 13.0万円 | 17.1万円 | 21.0万円 |
| 豊島区 | 7.3万円 | 8.8万円 | 14.0万円 | 20.9万円 | 25.9万円 |
| 北区 | 7.0万円 | 8.4万円 | 12.4万円 | 17.7万円 | 21.1万円 |
| 荒川区 | 7.3万円 | 8.4万円 | 12.2万円 | 18.6万円 | 21.5万円 |
| 板橋区 | 6.7万円 | 7.9万円 | 11.0万円 | 14.6万円 | 16.8万円 |
| 練馬区 | 6.5万円 | 7.6万円 | 11.0万円 | 13.0万円 | 14.0万円 |
| 足立区 | 6.6万円 | 7.4万円 | 9.0万円 | 12.6万円 | 14.5万円 |
| 葛飾区 | 6.0万円 | 7.4万円 | 8.7万円 | 12.0万円 | 15.0万円 |
| 江戸川区 | 6.0万円 | 7.2万円 | 9.3万円 | 12.5万円 | 15.9万円 |
| 八王子市 | 3.8万円 | 5.5万円 | 7.6万円 | 8.4万円 | 10.2万円 |
| 立川市 | 5.0万円 | 7.2万円 | 8.9万円 | 10.1万円 | 11.5万円 |
| 武蔵野市 | 6.7万円 | 7.8万円 | 12.7万円 | 17.1万円 | 21.8万円 |
| 三鷹市 | 6.3万円 | 7.3万円 | 10.8万円 | 13.9万円 | 17.2万円 |
| 青梅市 | 3.3万円 | 4.8万円 | 5.3万円 | 6.5万円 | 7.3万円 |
| 府中市 | 4.8万円 | 6.5万円 | 9.0万円 | 11.0万円 | 13.1万円 |
| 昭島市 | 5.5万円 | 5.7万円 | 6.7万円 | 8.7万円 | 10.9万円 |
| 調布市 | 5.6万円 | 7.3万円 | 9.5万円 | 12.5万円 | 15.0万円 |
| 町田市 | 4.8万円 | 6.5万円 | 7.7万円 | 8.4万円 | 12.0万円 |
| 小金井市 | 5.4万円 | 7.0万円 | 10.8万円 | 13.5万円 | 14.8万円 |
| 小平市 | 4.5万円 | 5.9万円 | 7.5万円 | 9.0万円 | 11.5万円 |
| 日野市 | 4.0万円 | 5.8万円 | 8.3万円 | 10.0万円 | 12.0万円 |
| 東村山市 | 4.2万円 | 5.9万円 | 7.0万円 | 8.8万円 | 9.5万円 |
| 国分寺市 | 5.2万円 | 6.7万円 | 9.8万円 | 13.0万円 | 15.2万円 |
| 国立市 | 5.2万円 | 6.5万円 | 8.9万円 | 12.8万円 | 18.3万円 |
| 福生市 | 3.9万円 | 4.9万円 | 6.2万円 | 7.0万円 | 8.6万円 |
| 狛江市 | 5.4万円 | 7.0万円 | 9.5万円 | 12.7万円 | 16.9万円 |
| 東大和市 | 5.4万円 | 5.5万円 | 6.1万円 | 7.3万円 | 9.2万円 |
| 清瀬市 | 4.5万円 | 6.0万円 | 7.4万円 | 8.1万円 | 9.6万円 |
| 東久留米市 | 5.0万円 | 5.1万円 | 7.7万円 | 8.6万円 | 10.2万円 |
| 武蔵村山市 | 3.9万円 | 4.0万円 | 5.8万円 | 6.5万円 | 8.1万円 |
| 多摩市 | 4.5万円 | 5.4万円 | 8.0万円 | 8.7万円 | 12.9万円 |
| 稲城市 | 4.2万円 | 5.7万円 | 8.2万円 | 9.7万円 | 12.2万円 |
| 羽村市 | 4.8万円 | 5.0万円 | 6.0万円 | 6.6万円 | 7.9万円 |
| あきる野市 | 4.8万円 | 5.0万円 | 5.3万円 | 6.5万円 | 7.5万円 |
| 西東京市 | 5.3万円 | 6.5万円 | 8.6万円 | 10.6万円 | 12.2万円 |
| 西多摩郡 | 3.4万円 | 3.5万円 | 5.2万円 | 6.5万円 | 6.9万円 |
神奈川県
購入
| マンション | |
|---|---|
| 首都圏 | 8,469万円 |
| 東京23区 | 14,789万円 |
| 東京都下 | 6,792万円 |
| 神奈川県 | 6,742万円 |
| 埼玉県 | 5,836万円 |
| 千葉県 | 5,995万円 |
| 新築戸建て | |
|---|---|
| 東京都 | 6,045万円 |
| 神奈川県 | 5,132万円 |
| 埼玉県 | 3,962万円 |
| 千葉県 | 3,953万円 |
5.【シミュレーション】東京都心vs神奈川主要都市(横浜)の比較(賃貸)
収入や住む場所によってもシミュレーション結果は異なってきますが、今回は下記条件で考えてみます。
- 世帯年収900万円
- 子ども2人(1歳から保育園入園)
- 世田谷区と横浜市鶴見区で比較
5-1. 18年間総額でシミュレーション
| 東京都 世田谷区 | 神奈川県 横浜市鶴見区 | |
|---|---|---|
| 家賃(2LDK) | 19.0万円/月 18年で4,107万円 | 12.2万円/月 18年で2,635.2万円 |
| 保育料(0〜2歳) | 無料 | 1人目 約6.5万円/月 約78万円/年 2人目 約3.25万円/月 約39万円/年 |
| 保育料(3歳〜) | 無料 | 無料 |
| 医療費 | 18歳まで無料 | 中学生まで無料 |
| 小学校給食費 | 無料 | 令和8年度より無料 |
| 中学校給食費 | 無料 | 一食330円 約66,000円/年 |
| 児童手当 | 2.5万円/月 30万円/年 | 2万円/月 24万円/年 |
世田谷区で住む際にかかる金額から横浜市鶴見区に住む際にかかる金額を差し引いてどちらが有利か見ていきます。
(家賃)4,107万円-2,635.2万円+(保育料)0万円-78万円×2-39万円×2+(医療費)0万円-24万円×3年×2+(給食費)0円-6.6万円×2-(児童手当)30万円×18年×2-24万円×18年×2=891.6万円
高校の間の医療費はざっくりと月2万円としましたが、結果は世田谷区の方が900万円ほど費用がかかる結果に。意外でしたね。
逆算すると、家賃の18年総額が3,215.4万円未満であれば世田谷区の方が有利となります。月あたりにすると約14.8万円ほどですね。
世田谷区において、1LDK〜2DKまでの賃料の平均が14.2万円なので、これは実現できそうな気がします。少し狭くなってしまうところを我慢できるかどうかといったところでしょうか。
今回は、世帯年収900万で試算しましたが、それ以外の年収帯ではどうでしょうか?
それぞれの年収ごとに東京に住む月あたりのメリット金額をまとめてみました。神奈川県など東京以外に住む場合と比べて、家賃の差をこの数字以下に抑えられると東京に住むメリットがあると言えます。
| 夫(妻)の年収 | 妻(夫)の年収 | メリット [円/月] |
|---|---|---|
| 400万円 | 300万円 | 約17,500円 |
| 400万円 | 400万円 | 約19,100円 |
| 500万円 | 400万円 | 約20,800円 |
| 600万円 | 400万円 | 約22,500円 |
| 700万円 | 400万円 | 約23,300円 |
| 800万円 | 400万円 | 約24,100円 |
| 800万円 | 500万円 | 約24,100円 |
| 800万円 | 600万円 | 約24,100円 |
基本的には年収が上がれば保育料もあがるため、年収が高い方の方が東京に住むメリットが大きくなります。ただ、18年にならすと月あたりのメリットはかなり限定的で、東京よりもむしろ神奈川県や埼玉県、千葉県に住む方が金銭的なメリットはあるかもしれません。
5-2. こどもが生まれてからの5年間で比較
さきほど18年にならすと東京に住むメリットが少なくなる旨お話しました。また、賃貸に住む場合、多くの場合は住み替えることもあるかと思います。そのため、ここでは子どもが小さい時に東京に住む想定で考えていきたいと思います。具体的には5年間で計算し、比較をしていきます。
まずは、先ほどと同様の条件で考えていきましょう。
(家賃)1,140万円-732万円+(保育料)0万円-78万円×2-39万円×2-(児童手当)(30万円×5年+30万円×3年-(24万円×5年+24万円×3年))=153万円
逆算すると、家賃の5年総額が987万円未満であれば世田谷区の方が有利となります。月あたりにすると約16.4万円ほどですね。
世田谷区の1LDK〜2DKの賃料平均が14.2万円なので、少し狭くてもOKであれば暮らしていけそうですね。
また、先ほどと同様に、それぞれの年収ごとに東京に住む月あたりのメリット金額をまとめてみました。神奈川県など東京以外に住む場合と比べて、家賃の差をこの数字以下に抑えられると東京に住むメリットがあると言えます。
| 夫(妻)の年収 | 妻(夫)の年収 | メリット [円/月] |
|---|---|---|
| 400万円 | 300万円 | 35,000円 |
| 400万円 | 400万円 | 41,000円 |
| 500万円 | 400万円 | 47,000円 |
| 600万円 | 400万円 | 53,000円 |
| 700万円 | 400万円 | 56,000円 |
| 800万円 | 400万円 | 59,000円 |
| 800万円 | 500万円 | 59,000円 |
| 800万円 | 600万円 | 59,000円 |
さきほどよりも月あたりのメリット金額が高くなっており、子どもが生まれて5年ほどは東京に住んだ方が有利になる場合が増えてくるのではないでしょうか?
6. 東京かそれ以外か?どっちがおすすめ?
では、東京に住むのがおすすめか、神奈川県や埼玉県に住む方がおすすめか、どちらなのかお話します。
結論から言えば、「東京がおすすめ」です。その中でも、東京23区のような家賃が高いところに住むのではなく、東京の西側の区外に住むのが金銭的には良いと思います。
家賃も高くなく、支援も手厚いので、完璧だと思います。
ただ、そうは言っても、勤務地や実家までの近さなど、その他にも考慮することが山ほどあります。
皆さんの個人の状況に照らしてみて、金銭的なメリットと精神的なメリット、肉体的なメリットを最大化できる選択肢を選んでもらえればと思います。
